初めに
燃費や電費は、車両性能を定量的に評価する上で最も重要な指標のひとつです。
そしてこれは、単なる「距離÷燃料」ではなく、各コンポーネント効率・車両重量・空力・転がり抵抗・制御など、複数の要素が複雑に絡み合って決まります。
現場では、燃費改善のために1%の効率向上を狙って様々な検討、試験を行い、少しでも製品の魅力を引き上げようと努力しています。筆者も様々な燃費・電費改善アイデアを提案、費用対効果を検証、実現可能性を試験で検証というサイクルを幾度も繰り返してきました。
本記事では、燃費・電費編第1回として燃費・電費走行モードについて、開発現場の視点で解説します。
燃費・電費走行モードについて(WLTC,Conb.)
燃費・電費の計算を行うために、まず燃費・電費計算用の走行モードについて理解しましょう。
ここでは近年、よく使われるWLTCとConb.(UDDS,Hwy)について紹介します。
〇WLTCの概要
日本、EU諸国、韓国、インドなど国際的に広く使われている燃費・電費走行モードで、排出ガスや燃費性能を評価するために使われています。WLTCはWorldwide-harmonized Light vehicles Test Cycleの略でまさに世界で一番使われている燃費・電費走行モードです。
走行モードとしては、WLTCの中に以下のような4モードを備えています。エキストラハイモード (Extra High)は特定の国や地域のみで利用していることに注意が注意しましょう、実際日本のWLTCは採用されていないです。(エキストラハイは130km/hまで車速が上がるが、日本で130km/hはNGないので採用されていないらしい。)
市街地モード (Low): 渋滞や信号が多い都市部での低速運転を想定。
郊外モード (Mid): 中速域で信号や渋滞が少ない走行条件を想定。
高速道路モード (High): 高速道路の走行を想定。
エキストラハイモード (Extra High): 高速道路のさらなる高速域の運転を想定。
〇WLTCの車速データ
本記事の説明用&今後のブログ用にWLTC車速の時系列データをネット上で探しに探しましたが、どうやら最新版の車速データはネット上で公開されていないようです・・
しかし、WLTCモードを作成する会議で検証用として作成されたデータが公開されているのを発見しました!こちらは最新版のWLTCモードと比較すると微妙に車速が異なる部分がありますが、ラフなシステム検討用であれば十分使えると思います。
車速データ:DHC-12th session | UNECE(WLTP-DHC-12-07のExcel)

〇Conb.(UDDS,Hwy)の概要
Conb.(UDDS,Hwy)はアメリカで主に使われている燃費・電費走行モードです。都市部(UDDS: Urban Dynamometer Driving Schedule)と高速道路(Hwy: Highway Cycle)の両方の走行条件から成ります。UDDSは都市部の低速・頻繁な停止・加速、Hwyは比較的一定した運転を模した走行条件になっています。
Conb.燃費はUDDSに55%、Hwyに45%の重みづけをし、以下のように計算します。
Conb. 燃費 (L/km)=0.55×UDDS燃費 (L/km)+0.45×Hwy燃費 (L/km)
〇Conb.(UDDS,Hwy)の車速データ
Conb.(UDDS,Hwy)の車速時系列データも探してきました!
こちらは燃費および排出ガス評価の基準策定を行う機関であるEPA(アメリカ環境保護庁)から提供されている車速データになるので、正しい値となります。
車速データ:https://www.epa.gov/vehicle-and-fuel-emissions-testing/dynamometer-drive-schedules


終わりに
本記事で紹介したWLTCやConb.(UDDS,Hwy)といった試験モードは、現場でシステム検討(燃費・電費・熱など)を計算するための基礎的なデータとなるので、把握しておきましょう。今回は車速条件に絞ってお伝えしましたが、実際にはもっと細かな測定条件等が存在します。これらの測定条件に関しましては、国交省のサイトなどに載っているのでご興味ある方は覗いてみてください。
次回からは燃費電費計算の具体的な方法について解説していこうと思いますので、お楽しみに!
Summary in English:
This article explains two major driving cycles used to evaluate fuel and energy efficiency—WLTC (international standard) and Conb. (UDDS/Hwy, U.S. standard)—from the perspective of real-world automotive development. Fuel and energy efficiency are not simply calculated as “distance divided by fuel”; they are determined by a complex interplay of factors such as vehicle weight, aerodynamics, rolling resistance, and control strategies. WLTC includes urban, suburban, and highway conditions, while Conb. combines city and highway driving scenarios. These driving modes serve as foundational data for fuel, energy, and thermal calculations, making it essential for engineers to understand their structure and speed profiles. In the next article, we’ll dive into the specific methods for calculating fuel and energy efficiency.
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