初めに
電気自動車の性能を語るうえで電費は大切な要素となります。このブログでは3回に分けて電費計算の基礎を解説しており、今回はラスト第3回目となります。
第3回では第2回で計算したタイヤ出力をベースに、モータ・インバータ・バッテリー効率の影響を加味したうえで電費の計算方法を説明します。第1回~第3回の考え方を押さえておけば、Excelによる簡易的な電費計算やMatlab等を用いた電費シミュレーションも可能になるので、しっかり押さえておきましょう。
第1回:電費とは何かと、エネルギーと走行距離からの電費計算方法
第3回:モータ・インバータ・バッテリー効率を考慮した電費計算方法
モータ・インバータ・バッテリー効率の考慮方法
まずは駆動時のエネルギーの流れから考えます。前提として、バッテリー、インバータ、モータの効率は一律90%と設定しました。
駆動時には、バッテリーから持ち出された電力はバッテリー、インバータ、モータ、タイヤと伝達される中で、それぞれのコンポーネントでロスが発生し、最終的に残った出力でタイヤが駆動されることになります。式にすると以下の通りです。
バッテリー消費電力(kW)×バッテリー効率(%)×インバータ効率(%)×モータ効率(%)
=タイヤ出力(kW)
今回は燃費・電費走行モードによりタイヤ側の出力は固定されているので以下のように式を変形し、タイヤ出力からバッテリー消費電力を計算します。
バッテリー消費電力(kW)
=タイヤ出力(kW)÷バッテリー効率(%)÷インバータ効率(%)÷モータ効率(%)
以下図内で計算したように、駆動時のバッテリー消費電力は105.7kWとなります。

次は回生時のエネルギーの流れを考えます。回生時はエネルギーの向きが逆になるので、タイヤで回収した減速方向のタイヤ出力はモータ・インバータ・バッテリーと伝達される中で、それぞれのコンポーネントでロスが発生し、最終的に残った電力がバッテリーに充電されることになります。式にすると以下の通りです。
バッテリー充電電力(kW)
=タイヤ出力(kW)×モータ効率(%)×インバータ効率(%)×バッテリー効率(%)
以下図内で計算したように、回生時のバッテリー充電電力は-39.4kWとなります。今回は駆動は0.2G、回生は-0.2Gと同じ加速度の絶対値で計算していますが、バッテリー消費電力:105.7kW、
バッテリー消費電力は-39.4kWとだいたい3分の1しか回収できていませんね。このように、だいたい自動車の回収できるエネルギーは3~4割程度なので、この感覚は覚えておきましょう。また計算から分かるように自動車の走行抵抗低減や、各コンポーネントの効率を向上させることは、回収可能なエネルギー割合を増加させ電費を向上させることに直結するので、重要なポイントとなります。

電費の計算方法
最後に電費の計算方法となります。今回は車速60km/hにおいて0.2Gで加減速している条件でしたので、この走行状態を10秒ずつ継続したとして計算してみます。
バッテリー消費電力:105.7(kW)
バッテリー消費エネルギー:105.7(kW)×10(sec)=1057(kJ)
バッテリー充電電力:-39.4(kW)
バッテリー充電エネルギー:-39.4(kW)×10(sec)=-394(kJ)
走行終了時のバッテリー消費エネルギー:1057-394=663(kJ)
663(kJ)×1000/3600=184.2(Wh)
走行距離:0.530(km)※ここの計算は省略
ここで一つ重要な点があります。電費で使うエネルギー量はバッテリーから消費されるエネルギーではなく、バッテリチャージャーから持ち出されるエネルギー量です。なのでバッテリーチャージャーから充電するときの効率もここで加味しましょう。ここは95%としておきます。
電費:184.2(Wh)÷0.53(km)÷95(%)=365.8(Wh/km)
以上のように、電費:365.8(Wh/km)と計算できましたね!
今回は一部の走行部分を切り取って計算しましたが、これを電費走行モード全体に適用することで、電費走行モードの電費を計算可能です。上記計算で用いた電費計算の考え方は以下を参照してください。
第1回:電費計算の原理とシミュレーション方法【自動車工学】/Part 1: Principles of energy consumption calculation and simulation methods【Car/Automotive Engineering】 | 現役エンジニアが教える! 自動車工学教室/Automotive Engineering Classes Taught by Active Engineers!
最後に
第1~第3回までありがとうございます。以上で電費計算基本編は終了となります。ここまでの解説で電費計算の基本は説明できたと思いますが、まだまだお伝えしたい情報はあるので、今後も解説はしていきたいと思います。TeslaモデルYの簡易的な電費計算をトライし、作成した電費計算ツール(Excel)の配布なども考えていますので、お楽しみに。
Summary in English:
In order to accurately evaluate the energy efficiency of electric vehicles, it is important to understand not only the tire output but also the efficiencies of the motor, inverter, and battery, as well as the flow of energy. This series provides a step-by-step explanation of the fundamentals to applications, equipping you with the knowledge to conduct simple calculations and simulations.
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